RPAとは

RPA(Robotic Process Automation)とは、ソフトウェアロボットを使って事務処理やルーティンワークなどの業務を自動化する技術です。人間が行っているくり返し作業をロボットが代行し、業務の効率化や品質向上を図ります。

RPAで業務自動化する仕組み

RPAで業務を自動化する際、その業務をPC上で行うことで業務手順を記録させる方法と、シナリオを作成する方法があります。

毎回全く同じ操作をする作業なら、まずは人間がPC上でその作業を行うことで、それをそのままRPAに実行させられます。このタイプはプログラミングの知識がなくても実行でき、導入しやすいです。

シナリオを作成する方法では、「何を・どんな条件のときに・どうするか」といった一連の流れを汲み、ロボットに実行させます。従来、この方法にはプログラミングの知識が必要でしたが、最近はドラッグ&ドロップや操作記録などによりシナリオ作成ができるツールも増えました。

いずれにしても、RPAを使いこなすための知識・スキルのハードルは下がり、RPAはどんどん身近になっているといえます。

RPAを導入する企業が増えた理由

RPAの導入が増えている理由として、誰もが真っ先に思いつくのが「時間とコストの削減」でしょう。RPAで作業を自動化すれば、人間の従業員がしなければならない業務が減り、効率化と人件費の削減が図れます。

しかし、RPAが加速度的に普及している理由はそれだけではありません。機械に業務を進めさせるRPAでは人的ミスが起こりません。

RPAにはスケーラビリティがあり、業務量が増えても処理が複雑になっても、シナリオの書き換えで柔軟に対応できます。人間の従業員のように、一人ひとりを時間をかけて育てる必要はないのです。

RPAの導入により、企業は効率や生産性を向上させ、利益を高めていけるでしょう。人間の社員は日々の雑務から開放され、従業員エンゲージメントも向上しやすくなります。

このように、RPA導入には単なる効率化に留まらないメリットがあります。次からは、これらのメリットについてもう少し詳しく見ていきましょう。

RPAを導入するメリット

RPAを導入する具体的なメリットを5つ紹介します。

メリット1:定型業務の削減と効率化

RPAを導入する1つ目のメリットは「定型業務の削減と効率化」です。

RPAで繰り返し作業やルーティンタスクを自動化することで、人間の従業員がしなければならない定型業務を減らせます。たとえばデータの入力や処理、フォームの作成などの繰り返し作業をロボットが自動的に行うことで、時間と労力を節約できます。

このような単純作業は簡単ではあるものの膨大で、従業員を疲弊させるものです。RPA導入により従業員の負荷が軽くなれば、従業員は集中力を保ちやすくなり、自らの手で行わなければならない業務をよりスピーディに進められるようになるでしょう。

メリット2:人件費の削減

RPAを導入する2つ目のメリットは「人件費の削減」です。

人間が行っていた作業をロボットに代行させることで、必要な人手が少なくなり、人件費を削減できます。たとえば以前は10人で行っていた作業も、RPAの導入により、システムの監督やトラブル対応をする1人で進められるようになるでしょう。

メリット3:人的ミスの防止

RPAを導入する3つ目のメリットは「人的ミスの防止」です。

人間による作業はミスのリスクがつきもので、疲れがたまるほど集中力は落ち、ミスをするリスクも高くなります。

一方、ロボットは疲れることもミスをすることもありません。常に一貫した方法で業務を実行し、正確に、スピーディに作業を進めていきます。これにより、業務の品質向上と顧客満足度の向上も期待できます

メリット4:対応可能な業務量の増加

RPAを導入する4つ目のメリットは「対応可能な業務量の増加」です。

RPAを導入することで、人員を増やさずにより多くの業務に対応できるようになります。作業量の増加によって従業員が追いつかない場合でも、RPAを活用することで一人あたりの処理能力を拡張できるでしょう。RPAの導入により、企業の成長や業務の拡大が加速するのです。

メリット5:人間社員のクリエイティブな時間の創出

RPAを導入する5つ目のメリットは「人間社員のクリエイティブな時間の創出」です。

RPAによって定型業務が自動化されることで、人間の社員のリソースを解放できるでしょう。これまでは定型業務に忙殺されていた社員にも時間と頭の余裕ができ、よりクリエイティブな業務に時間を割けるようになります。

戦略的な計画立案や顧客対応など、人間でなければできない業務に集中することで、イノベーションやビジネスの成長を促進できるでしょう。

RPAとほかのツールの違い

RPAは効率化と自動化を実現するためのツールですが、ほかのツールとは異なる特徴があります。RPAと他ツールの違いや、RPA以外の自動化の方法について見ていきましょう。

Excelのマクロや関数との違い

Excelのマクロや関数も業務の効率化に役立つツールですが、RPAとは異なるアプローチを取ります。

Excelのマクロや関数は特定の処理や計算を自動化するのに対し、RPAはさまざまなアプリケーションやシステムを連携させて複雑な業務プロセスを自動化します。マクロや関数と異なり、Excel以外での作業も自動化できるのがRPAです。

また、RPAは人間の操作を模倣することで業務を実行するため、専門的な知識がなくても自動化ができます。ある程度の知識や発想が求められるマクロ・関数よりも、自動化のハードルが低いのです。

AIとの違い

AI(人工知能)は人間の知的なタスクを模倣する技術ですが、RPAとは異なるアプローチを取ります。RPAはルールベースの自動化であり、決まった手順や条件に基づいて業務を自動化します。

一方、AIはデータや統計モデルに基づいて学習し、予測や意思決定を行います。簡単にいえば、AIは自分で判断ができるのです。

複雑な判断や解析が求められるタスクにはAIが、繰り返しの業務やルーティンワークの自動化にはRPAが適しています。

botとの違い

「bot」という用語は広義でさまざまな自動化ツールを指す場合もあり、RPAと近いツールとして知られています。

一般的に、botは特定のタスクを実行させることを、RPAは業務プロセス全体を自動化することを目的としています。RPAは複数のアプリケーションやシステムを連携させて業務を実行するため、botよりも幅広い業務領域に適用できるでしょう。

RPAの3つのクラスとできること

RPAは一般的に3つのクラスに分類されます。それぞれのクラスには異なる機能があり、適した業務も異なります。

クラス1.RPA(Robotic Process Automation)

クラス1のRPAは基本的な自動化機能を提供します。ルールベースのプロセス自動化に特化し、繰り返しのタスクやルーティンワークを効率的に処理することに特化しています。

主にマウスやキーボードの操作を模倣するだけでできるような、アプリケーションの画面上での処理やデータ入力の自動化に適したタイプです。

具体的にはデータのコピー&ペースト、フォームの入力、データの抽出や加工などを自動化できます。

クラス2.EPA(Enhanced Process Automation)

クラス2のRPAは「EPA」と呼ばれます。AIと連携しているため、ある程度であれば非定型な業務も自動化できます。

EPAを活用することで、複数のアプリケーションやシステムを連携させ、より複雑な業務プロセスを自動化できるでしょう。たとえば、複数のシステム間でデータの受け渡しや処理のフローを制御し情報を一元管理したり、画像や音声を解析したりなどができます。

クラス3.CA(Cognitive Automation)

クラス3のRPAは「CA」と呼ばれ、高度なAIと連携することで業務プロセスに加えて意思決定も自動化できます。

CAは人間の思考や行動を模倣するテクノロジーで、音声認識や自然言語処理などを、人間に近い知覚や判断で進められます。これにより、文章の解釈や予測、画像の認識、感情分析などの高度な業務を自動化できるでしょう。

RPAツールの選び方

RPAツールの導入目的は主に業務の自動化・効率化ですが、どのような業務をどのレベルで自動化したいのかにより、適したツールは異なります。ときには、RPA以外のツールが適していることもあるでしょう。

RPAをはじめとする自動化ツールの選び方について解説します。

課題の明確化と、自動化したい業務の選定

まずは、RPAを使って何をしたいのか、自社の課題や業務を明確にしましょう。ここが曖昧だと、機能が過剰なツールを割高で導入してしまったり、機能不足のツールを選んで効果が得られなかったりするかもしれません。

自社に本当にRPAが必要なのか見極める

RPAは効果的なツールですが、すべての業務に適しているわけではありません。たとえば簡単な計算やデータの自動入力なら、Excelの関数で十分なケースも多いです。問い合わせ対応の自動化であれば、RPAではなくチャットボットが適しているでしょう。

RPAの導入には初期投資や運用コストがかかります。自社に本当にRPAが必要なのか、コストを抑えて導入できる代替手段がないかを考えましょう。

RPAのクラスを選ぶ

自動化したい業務の性質や要件に応じて、適切なクラスのRPAを選びましょう。繰り返しの単純な業務にはクラス1のRPAが適しており、アプリケーション間の複雑な連携や解析を必要とする業務にはクラス2やクラス3のRPAが適しています。

機能ベースで候補をピックアップ

自動化したい業務が明確になり、必要な機能が見えてきたら、機能ベースで導入候補をピックアップしましょう。

市場にはさまざまなRPAツールがあります。それぞれどのような自動化機能を提供しているのか、操作性や柔軟性はどうか、カスタマイズや運用は容易にできるかなどを検討し、候補を絞り込んでいきましょう。

サポート体制で候補を比較

最近はノーコードで使えるRPAツールも増えましたが、やはりほかのツールと比べると、RPAは導入・運用のハードルが高いツールといえます。導入支援は十分か、運用中はどの程度のサポートを受けられるか、ベンダーのサポート体制や信頼度を確認しましょう。

導入後のトラブルや不具合に迅速に対応してくれるパートナーを選ぶことが、RPAの効果的な導入につながります。

料金の形態と金額で候補を比較

RPAツールの料金形態はさまざまです。買い切り制なのか月額制なのか、月額制なら料金は固定なのか、業務量やユーザー数による従量課金なのかなどをチェックします。

機能面・サポート面・費用面を俯瞰し、自社にとって導入効果が高く、お得に使えるツールを選びましょう。

自社に合った方法やRPAツールで、人件費の削減と従業員エンゲージメントの向上を

自社に合った方法やRPAツールを活用することで、人件費の削減や従業員エンゲージメント向上が期待できます。

ただ、これらのメリットを享受するには自社に合ったRPAを導入し、適切に運用しなければなりません。定型業務の自動化や効率化を進め、従業員がクリエイティブな業務に集中できる環境を整えることが重要です。そのためにはどんなツールが必要なのか、まずは考えてみましょう。