スタートアップの資金調達1.融資を受ける

スタートアップにおすすめな資金調達の1つ目は、融資を受ける方法です。融資ならまとまった金額を、比較的確実に調達できるでしょう。スタートアップを起こす際は実績がないため、審査のハードルが高めですが、「日本政策金融公庫」や「制度融資」なら、資金調達しやすいでしょう。

 日本政策金融公庫

日本政策金融公庫は、国が100%出資する金融機関です。主に個人事業主や中小企業への融資を行っているため、スタートアップでも利用しやすいでしょう。

ほかの金融機関と比べて金利が低めなこと、返済期間も「5年以上~」と長めなことから、安心して利用できます。

スタートアップの資金調達で融資を受けるなら、第一候補になる機関です。

 制度融資

制度融資は、民間の金融機関と信用保証協会による融資制度です。信用保証がつくため、金融機関単体の融資よりも、審査に通りやすいでしょう。

スタートアップは社会的信用の面で不利になることも多く、資金調達がしづらいこともあります。審査をクリアできる自信がないなら、制度融資を選ぶのがおすすめです。

ただ、複数の機関が関わるため、資金調達までに時間がかかります。申し込みから資金調達まで、3ヵ月ほどはかかると思っておきましょう。

スタートアップの資金調達2.出資を受ける

スタートアップならではの資金調達といえば、出資を受ける方法でしょう。スタートアップが出資を受ける場合、「ベンチャーキャピタル(VC)」と「個人(エンジェル)投資家」が主な選択肢となります。

どちらも目的は未上場の安いうちに株式を購入し、上場(公開)後に売却することで、差額による利益(キャピタルゲイン)を得ることです。投資先が上場しなければ投資家は利益を得られないため、上場するつもりのないスタートアップは利用できません。

ただ、投資先が上場しなければ利益を得られない性質上、投資家は上場(成長)のための協力を惜しみません。たくさんのスタートアップを成功に導いてきたノウハウに基づいた、経営に関するアドバイスを受けられるのも、出資を受けるメリットです。

 ベンチャーキャピタル(VC)

ベンチャーキャピタル(VC)は、スタートアップやベンチャー企業を対象に投資を行う「企業」です。組織としてたくさんのスタートアップを成功に導いてきたため、経営に関するアドバイスの質も高いでしょう。企業であるため資金力も高く、調達可能額も大きいです。

ただ、企業であるが故に投資先の選定には慎重であり、審査をクリアするのは難しいでしょう。

 個人(エンジェル)投資家

個人(エンジェル)投資家は、スタートアップやベンチャー企業を対象に投資を行う「個人」です。個人ではあるものの、たくさんのスタートアップを成功に導いてきたのはVCと同じであり、有益なアドバイスが期待できます。投資家本人が起業家であったケースも多く、経験に基づくアドバイスが期待できるでしょう。

個人であるため、VCよりも「情熱」や「ビジョンへの共感」がものを言う場合も多いです。VCから出資を受けられなくても、個人投資家からは出資してもらえるかもしれません。

ただ、個人であるが故に相性は重要です。相性が悪い投資家だと、VC以上に「経営に口を出されている」「自由に経営できない」と感じてしまうでしょう。

スタートアップの資金調達3.補助金・助成金を活用する

スタートアップに限らず、さまざまな事業主におすすめなのが「補助金・助成金」です。国や自治体による、事業主を支援するための制度で、調達した資金は基本的に返済不要です。審査や手続きには時間がかかるものの、ほぼノーリスクで資金調達できます。

補助金には予算があり、要件を満たしていても受給できないことがあります。助成金は要件さえ満たしていればほぼ確実に受給できるため、こちらをメインに考えるといいでしょう。

補助金にも助成金にもさまざまな種類があり、起業時に活用できるものから事業の維持や拡大に使えるものまで、役立つシーンは多いです。

 起業時におすすめな補助金・助成金

起業時におすすめな補助金・助成金には「地域創造的起業補助金(2017年以前の創業補助金)」や「ものづくり補助金」があります。

地域創造的補助金は、需要や雇用の創出・拡大を目的とした制度で、経済の活性化が目的です。店舗や事業所などの設備にかかるお金や人件費、マーケティングにかかる費用などが補助の対象となります。

ものづくり補助金は、”革新的な”サービス開発や設備投資などを補助する制度で、スタートアップにピッタリの補助金です。

 事業の維持や拡大におすすめな補助金・助成金

事業の維持や拡大におすすめな補助金・助成金は多いです。例えば雇用関係の助成金だけでも、従業員の正社員家や賞与・退職金制度の導入などを支援する「キャリアアップ助成金」、40歳以上の中途採用を支援する「中途採用等支援助成金」、働きやすい環境づくりを支援する「人材確保等支援助成金」などがあります。

「地域雇用開発助成金」は雇用関係の助成金ですが、事業所の設置にかかる資金を支援してもらえます。雇用機会が特に不足している地域の事業主が事業所を設置し、その地域の求職者を雇入れることが要件です。これは事業所の新設、つまり事業の拡大にも適しています。

「起業時におすすめな補助金・助成金」で紹介したものづくり補助金は、新しい商品やサービスの開発を支援するもののため、事業拡大にもおすすめです。

スタートアップの資金調達4.クラウドファンディング

スタートアップと相性の良い資金調達に「クラウドファンディング」があります。新しいプロダクトをつくりたい事業主(起案者)と、それを応援したい個人(支援者)をインターネットを通してつなぐサービスです。

支援者は資金提供や株式購入を通じて支援を行い、これにより集まった資金は原則として返済不要です。あくまで支援金であり、借金ではないため、負債も増えません。

クラウドファンディングにはいくつか種類があり、スタートアップの資金調達に特に向いているのは、「購入型」と「株式投資型」の2つでしょう。

 テストマーケティングも兼ねた「購入型」

「購入型クラウドファンディング」は、スタートアップの資金調達に最も適した方法かもしれません。

起案者はどんな商品やサービスをつくりたいのかをクラウドファンディングサイトに掲載し、支援者を募ります。支援者は支援額に応じた見返り(リターン)を受け取ることができ、たいていの場合、掲載したプロジェクトでつくる商品やサービスがリターンとなります。

このような性質から、応援や支援の気持ちを起点にしたインターネット通販のような側面があり、実際に通販感覚で利用する支援者も多いです。

購入型クラウドファンディング最大の特徴として、世の中にまだ出回っていない商品やサービスを、いち早く手に入れられるというものが挙げられます。革新的なサービスやガジェットをつくるスタートアップと相性が良いのは、このためです。

購入型クラウドファンディングで資金調達をするには、魅力的なリターンをつくり、支援者の「これが欲しい」という気持ちをかき立てることが大切です。どうすればそんなリターンをつくれるのかは、こちらの記事で解説しています。

クラウドファンディングが成功するリターンとは?設定方法と注意点

 資金調達特化の「株式投資型」

「株式投資型クラウドファンディング」は、資金調達に特化したタイプです。インターネットを通して自社の株式を購入してくれる人を募る方法で、最大の特徴は「未上場の株式を購入できること」でしょう。

未上場の株式を購入できる機会は、そう多くありません。株式公開前のスタートアップでも、比較的簡単に株式発行による資金調達ができる方法といえます。

株式投資型クラウドファンディングでは、通常の株式発行による資金調達と異なり、経営権を握られるリスクも低いです。株式は1人あたり50万円分までしか購入できないため、保有比率が変わるリスクが少ないのです。

ただ、購入した株式を売却するには、投資先が上場しなければなりません。そのため、上場するつもりのないスタートアップは利用できません。

スタートアップの資金調達5.ファクタリング

スタートアップが使える資金調達の中でも、つなぎ資金の調達におすすめなのが「ファクタリング」です。売掛債権を売却し、その金額内で早めに現金を調達する方法で、特に欧米では広く浸透しています。

売掛債権とは、掛売したお金を請求する権利のことです。掛売とは、商品やサービスを先に提供し、後からその分の代金を受け取ることです。請求書の金額内で、本来の支払い期日よりも早く現金を調達できると考えると、イメージしやすいでしょう。

あくまでも債権の売却であり、借金ではないため、負債は増えません。本来の支払い期日がきたら一括で返金しなければなりませんが、裏を返せば、借金と違って長期にわたる返済もありません。

ファクタリングには取引先に利用を知られない「2社間ファクタリング」と、取引先を加えることで手数料を抑えられる「3社間ファクタリング」があります。

 2社間ファクタリング

PayTodayの手数料について https://paytoday.jp/

手数料相場についての参考 https://it-trend.jp/factoring/article/690-0002#:~:text=%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%AF%E3%82%BF%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E6%89%8B%E6%95%B0%E6%96%99%E3%81%AE%E7%9B%B8%E5%A0%B4%E3%81%AF%E3%80%81%EF%BC%92%E7%A4%BE%E9%96%93%E3%81%A7,%E3%81%8C%E3%81%8B%E3%81%8B%E3%82%8B%E5%A0%B4%E5%90%88%E3%81%8C%E3%81%82%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82

https://asiro.co.jp/media/factoring/2016/

一般的に、ファクタリングという場合、「2社間ファクタリング」を指します。2社間ファクタリングは資金調達をしたい事業主とファクタリング会社の2社間で行う取引です。売却する売掛債権の請求先、つまり取引先を加えない取引なため、ファクタリングの利用を知られずに済みます。

ただ、手数料の相場は1~20%ほどと高めです。ファクタリング会社には、購入した売掛債権を回収できなくなるリスクがあり、それを踏まえた数値です。

ただ、最近は手数料を抑えた2社間ファクタリングも増えています。特に「PayToday」の手数料は1~9.5%と、3社間ファクタリング並みに低いです。

 3社間ファクタリング

PayTodayの手数料について https://paytoday.jp/

参考:https://www.takakuureru.com/magazine/20506#:~:text=%E5%8F%96%E5%BC%95%E5%85%88%EF%BC%88%E5%A3%B2%E6%8E%9B%E5%85%88%EF%BC%89%E3%81%AE%E4%BF%A1%E7%94%A8%E5%8A%9B%E3%81%8C%E4%BD%8E%E3%81%84,%E3%82%B1%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%81%8C%E5%A4%9A%E3%81%84%E3%81%A7%E3%81%97%E3%82%87%E3%81%86%E3%80%82

「3社間ファクタリング」は、資金調達をしたい事業主とファクタリング会社に、売掛金の請求先(取引先)を加えた3社間で行うファクタリングです。

取引先にファクタリングの利用を知られてしまうデメリットはありますが、ファクタリング会社の「売掛金を回収できなくなるリスク」は低くなるため、手数料を抑えられます。

ただ、ファクタリングを利用するときは、仕入れや経費の支払いが難しくなったときがほとんどです。このようなつなぎ資金を、割高な手数料を支払ってでも早めに資金調達をしたい状況、つまり経営難をイメージさせてしまいます。取引先からの印象ダウンにつながりかねない方法です。

3社間ファクタリングは手数料が低いものの、その相場は1~9%と、「PayToday」の2社間ファクタリングとそう変わりません。実際の手数料がいくらになるかは申し込んでみないとわかりませんが、まずは2社間ファクタリングの見積もりをもらった方がいいでしょう。

スタートアップに最適な資金調達は、タイミングによって異なる

“スタートアップが利用できる資金調達にはさまざまな種類がありますが、最適なものは、タイミングや目的によって異なります。ただ、どんな場合でも、返済不要な「補助金・助成金」は最初に検討しましょう。利用できそうな補助金・助成金があるかチェックしてから、ほかの方法を考えればいいのです。

「融資」には負債が増えるリスクが、「出資」には自由に経営できなくなるリスクがあります。「ファクタリング」は手数料こそ割高なものの、このようなリスクがなく、つなぎ資金の調達には使いやすいでしょう。

新規事業の立ち上げなら、「クラウドファンディング」がおすすめです。特に革新的なガジェットやサービスをつくるスタートアップは、クラウドファンディングとの相性が良いでしょう。

クラウドファンディングの種類や仕組みについてもっと詳しく知りたい方には、こちらの記事もおすすめです。

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