個人におすすめな資金調達は、ケースにより異なる

個人事業主が使える資金調達にはいくつか種類があり、それぞれ適したシーンが異なります。例えば大きな金額の必要となる開業時には、融資による資金調達が向いています。融資は事業拡大を考えるときにも有効な選択肢ですが、クラウドファンディングや補助金・助成金といった方法の方がリスクは低いでしょう。

具体的には、ケースごとに次のような資金調達がおすすめできます。

【個人事業主として開業するとき】 日本政策金融公庫からの融資 信用金庫からの融資

【個人事業主の事業拡大/維持】 補助金・助成金 クラウドファンディング ビジネスローン

【つなぎ資金の調達】 ・ファクタリング ・ビジネスカード ・単発アルバイト

個人事業主として開業するときの資金調達

個人事業主として開業するときに、それなりの資金が必要になることもあるでしょう。特に飲食店や小売店のような店舗や仕入れが必要な業種では、大きな金額を用意しなければなりません。

このようなシーンの資金調達には融資による資金調達が向いています。特に「日本政策金融公庫」と「信用金庫」は個人事業主でも審査に通りやすい点、金利が低めで返済期間にゆとりが持てる点でからおすすめです。

 1.日本政策金融公庫からの融資

個人事業主として開業するとき、資金調達の手段として最初に考えたいのが「日本政策金融公庫からの融資」です。日本政策金融公庫は国により設立された機関で、個人事業主や中小企業に対する融資を行っています。

政府による機関であるため、安心して利用できるのがポイントです。金利はほかの金融機関と比べても低めで、返済期間も5年以上の年月から選ぶこととなります。担保や保証人なしで融資を受けられるケースも多く、利用しやすいでしょう。

難点は審査にやや時間がかかることです。開業前には、個人事業主としての実績が何もありません。返済できることを示すために、説得力のある資料を作れなければ、審査はクリアできないでしょう。自己資金も、できるだけ多く用意したいです。

ただ、審査が厳しいといっても、銀行をはじめとする民間の金融機関よりはクリアしやすいでしょう。

 2.信用金庫からの融資

個人事業主として開業するときの資金調達には、「信用金庫からの融資」もおすすめです。信用金庫はその地域の繁栄を図るためにの共同組織です。銀行と異なり、営利目的の機関ではありません。

地域の繁栄という目的があるため、その地域の事業主に対する融資にも力を入れています。飲食店や小売店、製造関連など、地域に根差したビジネスをはじめるなら有力な候補といえます。

日本政策金融公庫よりは金利が高いものの、銀行よりも審査に通りやすく、利用しやすいでしょう。

個人事業主の事業拡大/維持に適した資金調達

個人事業主としてビジネスを続けるうちに、事業拡大のチャンスが訪れることもあれば、反対に存続の危機に立たされることもあるでしょう。

このような事業拡大/維持に適した資金調達には、次のようなものがあります。

【個人事業主の事業拡大/維持に適した資金調達】 ・補助金、助成金 ・ビジネスローン ・クラウドファンディング

 3.補助金・助成金

“事業の拡大や維持を考える際、資金調達の最初の候補となるのが「補助金・助成金」です。これらは事業主を支援するための公的制度で、調達した資金は返済不要です。ノーリスクで資金調達ができるため、まずは利用できそうな補助金・助成金がないかを探してみましょう。

補助金・助成金には「雇用の維持や拡大のためのもの」「事業所を新設するときに利用できるもの」などさまざまな種類があり、活用できるシーンも多いです。これらの制度の審査に通ることは、「その事業が公的に認められた」ということでもあり、社会的な信用アップにもつながります。

ちなみに、助成金は要件さえ満たせば受給できるのに対し、補助金には予算があります。補助金は要件を満たしていても受給できないこともありますが、時世にあった内容のものも多く、応募してみる価値はあるでしょう。

 4.ビジネスローン

事業の拡大にもおすすめな資金調達が、「ビジネスローン」です。事業主に特化した貸金で、数十万~数百万円を、比較的スピーディーに借りられます。審査スピードが早いうえに、一度申し込めば限度額内なら何度でも借り入れできるものも多く、使い勝手がいいです。

消費者金融が提供しているものも多く、クレジット会社の審査をクリアできなかった個人事業主でも利用できるかもしれません(個人事業主の場合、事業資金の借り入れでも、代表者個人の信用情報も参照されます)。

金利が高く、返済に時間がかかりやすいこと、支出が大きくなることなどのデメリットもあります。特に返済が「残高スライドリボルビング方式」のものは、元金がなかなか減りません。

 5.クラウドファンディング

事業拡大におすすめなのが「クラウドファンディング」による資金調達です。新しい商品やサービスをつくりたい起案者(事業主)と、それを応援したい支援者(個人)のマッチングサービスで、支援者は資金提供によりプロダクトを応援します。

もちろん、支援者も見返りなしで資金提供してくれるわけではありません。たいていの場合、クラウドファンディングに掲載する商品やサービスそのものを、支援者への見返りとして提供します。

応援や支援といった側面もあるインターネット通販のようなもので、この性質を活かし、テストマーケティングに活用されることも多いです。

個人事業主のつなぎ資金調達におすすめの方法

特にフリーランス系の個人事業主は、事業の運転資金と私的な生活資金の境目が曖昧です。運転資金はほとんどかからなくとも、取引先の事情や業績に仕事が左右されやすく、急に経営難に陥ることもあるでしょう。ビジネスそのものにお金はかからなくとも、生活費が足りなくなり、事業を維持できなくなることもあります。

そんなときにおすすめなのが、次のような資金調達です。これらはつなぎ資金の調達や工面に向いていて、低リスクで利用できます。いざというときの資金調達として、頭に入れておきましょう。

【個人事業主のつなぎ資金調達におすすめの方法】 ・ファクタリング ・ビジネスカード ・単発アルバイト

 6.ファクタリング

個人事業主はもちろん、中小企業やベンチャー企業のつなぎ資金調達には「ファクタリング」がおすすめできます。ファクタリングとは、売掛債権を売却し、その金額内で早めに現金を得る方法です。売掛とは、「商品やサービスを先に提供し、後から対価をもらうこと」で、売掛債権はこの対価を請求する権利のことです。

請求書に書かれている金額の範囲内で、早めに資金調達できるものと捉えると、わかりやすいでしょう。

ファクタリングはあくまで債権の売却であり、借金ではないため、負債は増えません。資金調達した分は、本来の支払期日に一括で返金しなければなりませんが、裏を返せば長期にわたる返済はありません。

手数料は割高ですが、いざというときに、低リスクで使える資金調達といえます。

 7.ビジネスカード

資金調達とは異なりますが、「ビジネスカード」で支払いのタイミングを遅らせる方法も、いざというときには役立ちます。ビジネスカードは個人事業主や法人を対象にしたクレジットカードです。「資金調達するほどではないが、経費の支払いが難しい」というシーンで、役に立つでしょう。

フリーランス系の個人事業主で、経費ではなく生活費の支払いに不安があるなら、通常のクレジットカードを使うのも手段です。

ただ、いずれの方法も支払いタイミングを遅らせるだけなので、収入の見通しを立ててから活用しましょう。

 8.単発アルバイト

こちらも資金調達とはやや異なりますが、ほんの少しのつなぎ資金なら、「単発アルバイト」で稼いでしまうのもいいでしょう。単発アルバイトには当日もしくは翌営業日に給与が支払われるものも多く、数万円ほどなら1週間もあればなんとかなります。

お金を借りるのでも、支払いを遅らせるのでもないため、ほぼノーリスクです。ただ、個人事業主としての稼働時間は減ってしまいます。納期やスケジュールを確認してから、アルバイトに応募しましょう。

個人の資金調達では、リスクヘッジを重視しよう

個人事業主の資金調達では、リスクヘッジを重視しましょう。個人事業主が利用できる資金調達は、法人よりも限られています。選択肢が少ないからこそ、自分でも利用できそうなものが見つかったとき、焦って申し込んでしまいやすいです。

例えばビジネスローンやファクタリングは個人事業主でもそれなりの金額を、比較的スピーディーに調達できますが、金利や手数料も高いです。返済や返金で手いっぱいになり、資金繰りが悪化してしまうケースもあります。

どんな資金調達にも、それなりのリスクがあります。リスクを踏まえ、自分の状況や経営状況にあったものを選びましょう。